最近の研究成果

DNAの切断から遺伝情報を守るメカニズムの解明

佐々木 真理子(ゲノム再生研究分野)
小林 武彦(ゲノム再生研究分野)
Molecular Cell(2017年5月18日発行予定)
(米国東部時間:5月18日(木)正午 日本時間5月19日(金)午前1時)

発表概要

私たちの体は、数十兆個もの細胞からできています。たった一つの受精卵からこれだけの数の細胞を作り出すためには、遺伝情報を担うDNA(注1)を複製によって正しくコピーしそれを娘細胞に受け渡すことが大切です。DNA複製の途中でトラブル(停止)が起きると、DNAの切断(DNA二本鎖切断)(注2)が引き起こされ、遺伝情報が壊れることにより、がんや多くの疾患の原因となるゲノムの異常を引き起こします。しかし、これまでこの切断されたDNAを修復するメカニズムはよく分かっていませんでした。

今回、東京大学分子細胞生物学研究所の小林武彦教授と佐々木真理子助教は、複製時に形成されるDNAの切断とその修復の過程を直接観察する実験系を確立しました。この実験系を用いて様々な因子の関与を検証した結果、Ctf4というDNA複製をになうタンパク質(注3)の1つが、DNAの切断の修復に必要であることが明らかになりました。

切断されたDNAの修復がうまくいかないとゲノムの異常を引き起こし、老化やがんの原因となります。本研究成果は、細胞の老化やがん化がなぜおこるのかを解明する重要な手がかりになると考えられます。

雑誌名等

雑誌名:Molecular Cell
論文タイトル:Ctf4 prevents genome rearrangements by suppressing DNA double-strand break formation and its end resection at arrested replication forks
著者:Mariko Sasaki and Takehiko Kobayashi*
DOI番号:10.1016/j.molcel.2017.04.020

問い合わせ先

東京大学分子細胞生物学研究所 ゲノム再生研究分野
教授 小林 武彦(こばやし たけひこ)
東京大学分子細胞生物学研究所 ゲノム再生研究分野
助教 佐々木 真理子(ささき まりこ)