研究内容の紹介
遺伝情報の伝達を支えるエピジェネティクス
生殖細胞は自らの遺伝情報を次世代に継承するという命題の下、その形態や核内環境をダイナミックに変化させながら成熟します。例えば精子の核は長径がわずか5ミクロンで、内部はヒストンが除去されてクロマチンが高度に凝集した結果、転写翻訳といった核内イベントはほぼ完全に停止していると考えられています。しかし近年、精子の中にはヒストンとRNAが少なからず存在することが明らかになり、これらが受精や遺伝情報伝達に何らかの役割を有する可能性が示唆されています。さらに最近、オスの一過性のストレスがエピゲノムマークとなって子孫に遺伝することが実験的に証明されたことから、精子が自分のDNA以外の因子を次世代に受け渡している可能性が高く、益々関心が高まっています。
私たちの研究室では、生殖細胞のクロマチン動態に着目し、それらが細胞増殖や分化・受精にどのような機能を有するかについて研究を進めています。具体的には①精子幹細胞の幹細胞性維持に関わるクロマチン因子の同定と解析、②精子形成におけるヒストンバリアントの役割の解析、③精子残存ヒストンの機能・生化学的構造解析、について解析を行っています。