2017年7月31日
/ 最終更新日時 : 2019年3月14日
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発生・再生研究分野
iPS細胞からヒト肝臓モデルを開発
厚井 悠太(発生・再生研究分野 博士課程2年生)
木戸 丈友(発生・再生研究分野 助教)
宮島 篤(発生・再生研究分野 教授)
Stem Cell Reports(米国東部時間7月27日、日本時間7月28日)
DOI番号:10.1016/j.stemcr.2017.06.010
発表概要
肝非実質細胞(肝類洞内皮細胞や肝星細胞など、注6)は、肝細胞の分化や機能維持に寄与するだけでなく、様々な肝疾患において重要な役割を果たしています。そのため、創薬研究への応用を目的とした多様な肝機能を備えた肝組織やin vitro(注7)肝疾患モデリングの開発において、肝非実質細胞は必須の細胞です。今回、東京大学分子細胞生物学研究所の厚井悠太大学院生、木戸丈友助教、宮島篤教授らの研究グループは、マウス肝発生過程を解析し、肝類洞内皮細胞、肝星細胞の前駆細胞の同定・分取に成功し、さらに、その分化・成熟には、それぞれTGFbシグナル、Rhoシグナルが関与すること見出しました。また、このマウス肝発生過程の解析から明らかとなった各非実質細胞の前駆細胞の分離法や増幅・成熟化培養系をヒトiPS細胞からの分化誘導(注8)に応用し、ヒトiPS細胞由来の肝類洞内皮細胞、肝星細胞の樹立に成功しました。ヒトiPS細胞由来の肝類洞内皮細胞、肝星細胞は肝成熟化に関与する分泌因子や細胞外マトリクス等を高発現し、iPS細胞由来肝前駆細胞との共培養系(ヒト肝臓モデル、注9)において、肝前駆細胞の増殖や肝細胞への分化を支持することを明らかにしました。今後は、構築したヒト肝臓モデルを肝炎ウイルス感染系などの肝疾患モデルへ応用し、肝疾患に対する新たな予防・診断・治療薬の開発を目指します。
なお、本成果は、日本医療研究開発機構(AMED)の肝炎等克服緊急対策研究事業「ヒトiPS細胞由来肝細胞/肝組織による肝炎ウイルスの感染・増殖系の樹立と応用」(研究代表者:宮島篤)、再生医療実現拠点ネットワークプログラム事業幹細胞・再生医学イノベーション創出プログラム「ヒトiPS細胞由来肝構成細胞による肝線維化モデルの樹立と応用」(研究代表者:木戸丈友)、科学研究費助成事業 基盤研究(A)「肝臓の炎症・再生・病態を制御する細胞間相互作用」(代表研究者:宮島篤)、同 若手研究(B)「ヒトiPS細胞由来肝組織を用いたハイスループットスクリーニング系の構築」(代表研究者:木戸丈友)の支援を受けて実施されました。
雑誌名等
雑誌名: Stem Cell Reports(オンライン版米国東部時間7月27日掲載予定)
論文タイトル: An
in vitro human liver model by iPSC-derived parenchymal and non-parenchymal cells
著者: Yuta Koui, Taketomo Kido, Toshimasa Ito, Hiroki Oyama, Shin-Wei Chen, Yuki Katou, Katsuhiko Shirahige, and Atsushi Miyajima
DOI番号:10.1016/j.stemcr.2017.06.010
問い合わせ先
【研究に関すること】
東京大学 分子細胞生物学研究所 発生・再生研究分野
教授 宮島 篤(みやじま あつし)
助教 木戸 丈友(きど たけとも)
【AMED事業に関すること】
日本医療研究開発機構
戦略推進部 感染症研究課
戦略推進部 再生医療研究課