研究内容の紹介
脳の意思決定の仕組みを情報学的に理解する
脳科学は魅力的で面白いです。なぜなら脳科学には、私達がどのように音を聞き、どのように考え、どのように行動を決定するかを解明できる可能性があるからです。私達の研究室は、この意思決定の脳内プロセスの解明を目指しています。私達は、人工知能 (AI) に用いられる機械学習に注目しました.機械学習は、画像や動画から人の位置を検出し、囲碁の盤面から次の1手を見つけ出します。現在の機械学習は、感覚情報処理から行動決定までを高精度で実現します。情報処理における脳と機械学習の共通点・違いは何でしょうか。私達は、モデル動物としてマウスを用いて、主に2選択肢課題中のマウスの神経活動をカルシウムイメージングで計測します。また、マウスの脳活動を光遺伝学で変化させます。マウスの行動や脳活動と、機械学習との関係を調べることで、脳の理解に繋げます。
私の出身学部は、本学の工学部・知能機械情報学です。生物の勉強を始めたのは学部4年生からで、それまではロボットや人工知能のことしか考えていませんでした。その当時、深層学習が無かったこともあり、「知能を作るにはまず脳を知ろう」と思い、神経科学の道に入りました。その後、銅谷賢治先生 (沖縄科学技術大学院大学) とAnthony Zador先生 (Cold Spring Harbor Laboratory) の下で、理論と実験の融合研究を学びました。脳の神経回路にも,人工知能と同様な最適機能が実装されている。このような結果を得るたびに、脳の素晴らしさを実感します。
動物の脳には可能ですが、機械学習には困難な課題があります。今後、このような課題をマウスで実施し、神経活動を計測し、機械学習との違いを調べます。将来は、脳で得た知見を人工知能に応用します。