最近の研究成果

気管支喘息を制御する新しい分子機構を解明
~新しい喘息治療薬の開発へ向けて~

秋山 徹、山角 祐介、佐々木 欧(分子情報研究分野)
Cell Reports(米国東部夏時間8月18日、日本時間8月19日)

発表概要

今回、東京大学分子細胞生物学研究所分子情報研究分野の秋山徹教授、山角祐介特任研究員、同医学部附属病院アレルギーリウマチ内科の佐々木欧助教らの研究グループは、気管支喘息(注1)を制御する新しい分子機構を発見しました。

気管支喘息の発症メカニズムは近年活発に研究されており、インターロイキン 33(IL-33、注2)というタンパク質が重要な機能を担っていることが明らかになっています。しかしながら、これまでIL-33の量を制御する機構に関してはあまりわかっていませんでした。研究グループは、気管支喘息マウスモデルを用い、RNA結合タンパク質Mex-3B(注3)がIL-33の発現を促進することによって気道炎症を促進していることを発見しました。また、その制御機構を詳細に解析したところ、Mex-3BはIL-33 mRNAに直接結合し、miRNA(注4)の機能を阻害することによりIL-33のタンパク質量を増やしていることが明らかになりました。さらに、Mex-3Bに対するアンチセンス核酸(注5)の噴霧・吸入により気道におけるMex-3Bの働きを抑えることで、気道炎症を抑制できることも明らかにしました。

Mex-3B遺伝子を欠損したマウスは正常に発達し、成体でも異常が認められないことから、Mex-3Bを標的とした薬剤は副作用の少ない新機序の気管支喘息治療薬となりうることが期待されます。

雑誌名等

雑誌名:「Cell Reports」
論文タイトル: The RNA-binding protein Mex-3B is required for IL-33 induction in the development of allergic airway inflammation
著者: Yusuke Yamazumi, Oh Sasaki, Mitsuru Imamura, Takeaki Oda, Yoko Ohno, Yumi Shiozaki-Sato, Shigenori Nagai, Saki Suyama, Yuki Kamoshida, Kosuke Funato, Teruhito Yasui, Hitoshi Kikutani, Kazuhiko Yamamoto, Makoto Dohi, Shigeo Koyasu and Tetsu Akiyama*
DOI番号: 10.1016/j.celrep.2016.07.062

問い合わせ先

東京大学分子細胞生物学研究所 分子情報研究分野
教授 秋山 徹(あきやま てつ)

東京大学分子細胞生物学研究所 分子情報研究分野
特任研究員
山角 祐介(やまずみ ゆうすけ)