最近の研究成果

大腸がん発症の鍵を握る仕組みの解明

秋山 徹、川崎 善博(分子情報研究分野)
Cell Reports(米国東部夏時間8月25日、日本時間8月26日)

発表概要

Wntシグナル(注1)の異常な活性化が大腸癌発症の最も大きな原因であると考えられています。Wntシグナルはたくさんの遺伝子の発現を引き起こしますが、その中でも転写因子をコードするc-Myc遺伝子(注2)はがんの発症に最も重要な因子であると考えられています。しかしながら、Wnt/c-Mycががんの発症を誘導する仕組みについては未だ不明な点が残されています。東京大学分子細胞生物学研究所の秋山教授、川崎准教授らの研究グループは、ほとんどの大腸がんでWnt/c-Mycがタンパク質をコードしない新規の長いRNA〝MYU〞の発現を誘導していることを見いだしました。さらに、①MYUは大腸がん細胞が腫瘍をつくるために必須の役割を果たしていること、②MYUは細胞周期を進める機能をもつタンパク質CDK6(注3)の発現亢進を引き起こしていること、③MYUによるCDK6の発現亢進が大腸がん細胞の増殖の大きな要因であることを見出しました。大腸がんの新しい治療戦略として、 MYUおよびMYUが腫瘍をつくる仕組みを標的とした薬剤の創製が期待されます。

雑誌名等

雑誌名: Cell Reports
論文タイトル: MYU, a target lncRNA for Wnt/c-Myc signaling, mediates induction of CDK6 to promote cell cycle progression
著者: Yoshihiro Kawasaki*, Mimon Komiya, Kosuke Matsumura, Lumi Negishi, Sakiko Suda, Masumi Okuno, Naoko Yokota, Tomoya Osada, Takeshi Nagashima, Masaya Hiyoshi, Mariko Okada-Hatakeyama, Joji Kitayama, Katsuhiko Shirahige, Tetsu Akiyama*(*co-corresponding author)
DOI番号: 10.1016/j.celrep.2016.08.015

問い合わせ先

東京大学分子細胞生物学研究所 癌幹細胞制御研究分野
准教授 川崎善博(かわさき よしひろ)

東京大学分子細胞生物学研究所 分子情報研究分野
教授 秋山 徹(あきやま てつ)