発表概要
肝線維症は肝臓に大量に線維が蓄積する病態です。線維症が進行すると肝硬変や肝がんにつながるため、線維症を治療することは極めて重要です。線維化した肝臓においては、肝星細胞が “静止状態”から“活性化状態”へと移行し、線維を過剰に産生して、線維化の進行に大きく関与することが知られています。しかしながら、肝星細胞の活性化プロセスを評価するモデルは存在せず、線維症の有効な治療薬の開発が遅れていました。
今回、発生・再生研究分野の厚井悠太特任研究員(研究当時)、宮島篤特任教授、木戸丈友特任講師らの研究グループは、ヒトiPS細胞から静止期の肝星細胞を作製する技術を確立し、それらを用いた肝線維症治療薬のスクリーニングシステムを開発しました。これにより、ヒトiPS細胞から“静止状態”の肝星細胞を調製することができ、培養によって“活性化状態”へ誘導することが可能となりました。また、“静止状態”から“活性化状態”への性質の変化を、蛍光量を指標に簡便かつ定量的に評価する技術を開発しました。この技術を創薬研究に広く応用することで、新しい肝線維症治療薬の開発が期待されます。
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雑誌名等
雑誌名:Stem Cell Reports
論文タイトル:Development of human iPSC-derived quiescent hepatic stellate cell-like cells for drug discovery and
in vitro disease modeling
著者:Yuta Koui, Misao Himeno, Yusuke Mori, Yasuhiro Nakano, Eiko Saijou, Naoki Tanimizu, Yoshiko Kamiya, Hiroko Anzai, Natsuki Maeda, Luyao Wang, Tadanori Yamada, Yasuyuki Sakai, Ryuichiro Nakato, Atsushi Miyajima, Taketomo Kido
DOI番号:10.1016/j.stemcr.2021.11.002
URL:
https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2021.11.002
問い合わせ先
木戸 丈友(きど たけとも)
東京大学定量生命科学研究所 特任講師