最近の研究成果

自閉症の原因となる遺伝子を特定
GABA受容体の運び屋タンパク質が発症の鍵握る

中村 勉、秋山 徹(分子情報研究分野)
Nature Communications(3月16日)

発表概要

自閉症は、対人関係の障害、コミュニケーションの障害、限定的な興味やこだわりを中核症状とする発達障害のひとつです。80~100人に1人の割合で発症するきわめて身近な発達障害ですが、発症の詳しい仕組みは分かっていません。東京大学分子細胞生物学研究所の中村勉講師と秋山徹教授らの研究グループは、PX-RICS遺伝子を欠損するマウスが、自閉症の症状に特徴的な行動異常を示すことを見出しました。さらに、PX-RICS遺伝子がヤコブセン症候群患者に発症する自閉症の原因となる遺伝子であると特定しました。PX-RICSは大脳皮質などの神経細胞に豊富に存在し、GABA受容体(注1)を神経細胞の表面へ運ぶ役割を担っています。GABA受容体の輸送が自閉症の発症に関係することは新たな知見です。自閉症の新しい治療戦略として、GABA受容体の輸送を改善する薬剤の創製が期待されます。

雑誌名等

雑誌名: Nature Communications
論文タイトル: PX-RICS-deficient mice mimic autism spectrum disorder in Jacobsen syndrome through impaired GABAAreceptor trafficking
著者: Tsutomu Nakamura*, Fumiko Arima-Yoshida, Fumika Sakaue, Yukiko Nasu-Nishimura, Yasuko Takeda, Ken Matsuura, Natacha Akshoomoff, Sarah N. Mattson, Paul D. Grossfeld, Toshiya Manabe & Tetsu Akiyama
DOI番号: 10.1038/ncomms10861

問い合わせ先

東京大学分子細胞生物学研究所 分子情報研究分野
講師 中村 勉