最近の研究成果

PD-1がT細胞の質を制御するメカニズムの解明分子免疫学研究分野

清水 謙次(東京大学定量生命科学研究所 分子免疫学研究分野 特任助教/徳島大学先端酵素学研究所 免疫制御学分野 専門研究員)
岡崎  拓(東京大学定量生命科学研究所 分子免疫学研究分野 教授/徳島大学先端酵素学研究所 免疫制御学分野 客員教授)
Molecular Cell(2020年1月8日オンライン版)

発表概要

病原体やがん細胞から我々の体を護る免疫システムにおいて司令塔と実行役の両方の役割を担うT細胞は、抗原を認識することによって活性化します。T細胞が活性化するとさまざまな遺伝子の発現が変化し、生存・増殖・分化・サイトカイン産生などの応答を示します。これまでに抑制性免疫補助受容体PD-1がT細胞の活性化を抑制することは知られていましたが、遺伝子レベルでT細胞をどのように変化させているかは不明でした。

今回、東京大学定量生命科学研究所の清水謙次特任助教と岡崎拓教授らの研究グループは、T細胞の遺伝子発現にPD-1が及ぼす影響を詳細に調べました。その結果、PD-1によって発現上昇が抑制される遺伝子とされない遺伝子があることを発見しました。また、それらの遺伝子の特徴を解明しました。

現在、がん治療薬としてPD-1阻害抗体が多くの患者さんに使われていますが、その効き目はがんの種類や個人によって大きく異なります。本研究成果は、PD-1阻害抗体によるがん免疫療法の改良や新しい免疫制御療法の開発に役立つと期待されます。

この研究成果は2020年1月8日付(現地時間)で米国科学雑誌「Molecular Cell」オンライン版に掲載されました。

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雑誌名等

雑誌名:Molecular Cell(2020年1月8日オンライン版)
論文タイトル:PD-1 imposes qualitative control of cellular transcriptomes in response to T cell activation
著者:Kenji Shimizu, Daisuke Sugiura, Il-mi Okazaki, Takumi Maruhashi, Yujiro Takegami, Chaoyang Cheng, Soichi Ozaki, and Taku Okazaki*
DOI番号:10.1016/j.molcel.2019.12.012

問い合わせ先

東京大学定量生命科学研究所 分子免疫学研究分野
教授 岡崎 拓 (おかざき たく)