最近の研究成果

植物が分解するべき「異常」なRNAと守るべき「正常」なRNAを見分けるしくみの解明

Kyungmin Baeg、岩川 弘宙、泊 幸秀(RNA機能)
Nature Plants(イギリス時間3月20日、日本時間3月21日)

発表概要

植物はウイルスRNAや人為的に導入した遺伝子から生まれたRNAなどを「異常」なRNAと認識し、転写後ジーンサイレンシング(PTGS)と呼ばれる機構を介して分解します。しかしながら植物がどのようなしくみで異常なRNAと自身がもつ「正常」なmRNAを見分け、異常なRNAのみをPTGSで分解するのかはこれまで明らかにされていませんでした。

今回、東京大学分子細胞生物学研究所のKyungmin Baeg 大学院生、岩川 弘宙 助教、および泊 幸秀 教授の研究グループは、PTGSの引き金となる二本鎖RNAを合成するRNA依存性RNAポリメラーゼ6(RDR6)と呼ばれる酵素の性質を試験管内で詳細に解析しました。その結果、RDR6はmRNAの末端にあるポリA鎖をチェックすることで正常なmRNAであると判断し二本鎖化を見逃す一方で、ポリA鎖を持たないRNAは二本鎖化しPTGSに導くという特殊な性質をもつ事が明らかになりました。

「なぜ正常なmRNAはPTGSの標的にならないのか?」という四半世紀近くにおよぶ謎を解き明かした本成果は、応用面においても有用な作物を高効率で創出するための重要な手がかりになると考えられます。

雑誌名等

雑誌名: Nature Plants(3月20日オンライン版)
論文タイトル:T he poly(A) tail blocks RDR6 from converting self mRNAs into substrates for gene silencing
著者: Kyungmin Baeg, Hiro-oki Iwakawa* and Yukihide Tomari*(*責任著者)
DOI番号: 10.1038/nplants.2017.36

問い合わせ先

東京大学分子細胞生物学研究所 RNA機能研究分野
助教 岩川 弘宙(いわかわ ひろおき)

東京大学分子細胞生物学研究所 RNA機能研究分野
教授 泊 幸秀(とまり ゆきひで)