最近の研究成果

長鎖ノンコーディングRNAが制御する新たな大腸がん化のメカニズム

秋山 徹、谷上 賢瑞(分子情報研究分野)
Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America
(米国東部夏時間:10月17日、日本時間10月18日)

発表概要

大腸がんは、APC変異がもたらす転写因子β-cateninの大量蓄積によるWnt経路の恒常的活性化によって生じると考えられています。しかし、Wnt/β-catenin経路が大腸がんの発生・維持を行う仕組みについては未だ明らかになっていない点が多く残されています。今回、東京大学分子細胞生物学研究所の秋山徹教授、谷上賢瑞助教らの研究グループは、大腸がんにおいて長鎖ncRNAである ASBEL 及び転写制御因子である TCF3 (注5) タンパク質が β-catenin によって同時に発現を誘導されていることを発見しました。さらに、ASBELがTCF3と複合体を形成してATF3 (注6) の発現を制御することが、大腸がんの腫瘍形成能に重要であることを明らかにしました。

本研究結果により、Wnt/β-catenin経路によって直接発現の制御を受け、さらに腫瘍形成能に関わる長鎖ncRNA-転写制御因子複合体が存在していることが明らかになりました。さらに、大腸がん細胞内におけるASBEL -TCF3複合体が、がん治療の重要な標的となることが示唆されました。ASBEL -TCF3経路を標的とした薬剤を創製することにより、大腸がんの治療に貢献することが期待されます。

雑誌名等

雑誌名: Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America
論文タイトル: The ASBEL-TCF3 complex is required for the tumorigenicity of colorectal cancer cells
著者: Kenzui Taniue, Akiko Kurimoto, Yasuko Takeda, Takeshi Nagashima, Mariko Okada-Hatakeyama, Yuki Kato, Katsuhiko Shirahige, and Tetsu Akiyama
DOI番号: 10.1073/pnas.1605938113

問い合わせ先

東京大学分子細胞生物学研究所 分子情報研究分野
教授 秋山 徹(あきやま てつ)

東京大学分子細胞生物学研究所 分子情報研究分野
助教 谷上賢瑞(たにうえ けんずい)