遺伝子の発現とクロマチン構造の維持を両立させる仕組み -RNAポリメラーゼはヌクレオソームを壊して組み立てる-(8月19日)(クロマチン構造機能研究分野)

 理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター転写制御構造生物学研究チームの江原晴彦研究員、関根俊一チームリーダー、東京大学定量生命科学研究所クロマチン構造機能研究分野の鯨井智也助教、胡桃坂仁志教授らの共同研究グループは、真核細胞の遺伝子発現を担うRNAポリメラーゼII(RNAPII)が、メッセンジャーRNA(mRNA)の転写に際して、いったんほどいたヌクレオソームを転写直後に組み立て直すことで、クロマチン構造を壊さずに転写を行う仕組みを解明しました。

 本研究成果は、真核細胞の核内では遺伝子発現とクロマチン構造の維持がどのように両立しているのかという生物学上の大きな謎に答えるものであり、今後、転写制御やその破綻による疾患メカニズムの理解への発展が期待できます。

 真核生物のDNAはヒストンタンパク質と結合してヌクレオソーム構造を形成し、さらに複数のヌクレオソームが数珠状に連なったクロマチンと呼ばれる高次構造をとって、細胞核内に収納されています。mRNAの転写を担う酵素であるRNAPIIは、DNAを転写する際にヌクレオソームをほどく必要がありますが、ほどかれたヌクレオソーム構造が再形成される仕組みは不明でした。

 今回、共同研究グループは「クライオ電子顕微鏡」を用いて、RNAPIIが複数のタンパク質(転写伸長因子やヒストンシャペロン)の助けを借りてヌクレオソームを通過する様子を捉えました。その結果、RNAPIIが前方のヌクレオソームをいったん解体し、後方で組み立て直す仕組みが初めて明らかになりました。

 本研究は、科学雑誌『Science』オンライン版(8月18日付:日本時間8月19日)に掲載されました。

 

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