細胞老化を促進し寿命を制限するメカニズムを解明

 個体が老化する原因の1つとして、細胞老化が考えられています。出芽酵母は、これまで細胞老化のメカニズムを明らかにする上で重要なモデル生物として、広く利用されてきました。この出芽酵母の寿命に影響を及ぼす原因の1つとして、ゲノム中で最大の脆弱部位(壊れやすい部位)であるリボソームRNA遺伝子(rDNA)の不安定化に起因することが知られていますが、その詳細なメカニズムは未だ解明されていません。

 東京大学定量生命科学研究所の横山正明特任研究員、佐々木真理子講師、小林武彦教授らの研究グループは、rDNAの不安定化を介して老化を誘導する遺伝子を特定するために、長寿欠損株のrDNAの安定性を網羅的に解析しました。その結果、転写伸長因子Spt4の遺伝子(SPT4)を欠損した株では、大幅なrDNAの安定性の増加によって、寿命が延長していることを発見しました。また、その表現型を示す原因として、rDNA上の非コードプロモーター(E-pro)の転写活性が低下していることを発見しました。加えて、加齢と共にSpt4の発現量が増加することで、E-proの転写活性がより増強され、細胞老化を加速し寿命を制限させることが観察されました。

 以上の発見から、Spt4は、rDNAを不安定化させることで細胞老化を促進させる老化因子として機能していることが判明しました。本成果は、ヒト細胞の老化のメカニズム解明および老化に関連した疾患への治療に応用されることが期待されます。

 

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