統合的ゲノム解析のためのWebデータベース”CohesinDB”を開発(9月27日)

 コヒーシンはゲノムの立体構造制御や遺伝子発現制御に重要な役割を果たすタンパク質複合体です。コヒーシンの変異は急性骨髄性白血病や複数の先天性疾患の要因となることから、これらの疾患の発症メカニズムを解明するうえで、コヒーシンの果たす機能を明らかにすることが求められています。しかしながら、コヒーシンの機能はエピゲノム・転写制御・ゲノム立体構造制御など多岐にわたるため、網羅的な全ゲノム解析は難易度が高く、これまで困難でした。

 東京大学大学院医学系研究科の王健康大学院生、定量生命科学研究所附属高度細胞多様性研究センター 大規模生命情報解析研究分野の中戸隆一郎准教授は、そのような統合的大規模解析の解析コストを低減するため、コヒーシンに関するゲノム解析データを格納した大規模データベース”CohesinDB” (https://cohesindb.iqb.u-tokyo.ac.jp/) を開発しました。本データベースでは、過去に論文として報告されデータが公開されている全ゲノムデータを網羅的に収集し、独自のパイプラインを用いて統一的に再解析のうえ、得られたコヒーシンに関連するエピゲノム領域(プロモーター・エンハンサーなど)、遺伝子、クロマチンループなどを統一的にラベル付けし、データベースとして公開しています。本データベースはWebブラウザシステムを通じて可視化、解析、データダウンロードなどが誰でも簡単に行うことができます。これにより、情報学の非専門家にとってこれまで難しかった大規模ゲノム解析が容易になり、コヒーシン研究の一層の推進が期待されます。

 本研究は、AMED-PRIME「頑健なデータ駆動形エピゲノム解析を実現する情報解析システムの構築」(代表:中戸隆一郎、JP22gm6310012h0003)、からの支援を受けて実施されました。

 本研究は、2022年9月27日付でNucleic Acids Research誌に掲載されました。

 

詳細はこちら