定量生命科学研究所セミナー(9月15日)

日時: 令和4年9月15日(木)16:00-17:00

会場: 弥生講堂 一条ホール (https://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/

講演者: 齊藤 博英 京都大学 iPS細胞研究所 教授
     京都大学 iPS細胞研究所 未来生命科学開拓部門 部門長

参加対象者: 定量生命科学研究所関係者(教員、学生、職員等)

プログラム: 16:00-16:45 講演
                 16:45-17:00 質疑応答

参加方法 :   9月15日12:00までに下記のformsのご入力をお願いします。
                 ※締め切り前に定員に達した場合は、受付を終了させていただきますので、予めご了承ください。
                 回収した個人情報は、取扱いに十分注意しながら、本セミナーの開催及び、万が一、後日新型コロナ
                 ウイルス感染が発生した場合の連絡先として使用させていただきます。

申し込み先:

https://forms.office.com/Pages/ResponsePage.aspx?id=T6978HAr10eaAgh1yvlMhNUJZw_kCvFDlQqCputgUXdUNDNNVTVFWFZCSFpHTVJPVUkyMEU2UVBDUS4u

要旨:
私はRNA やRNA-タンパク質複合体(RNP)を基盤する生命システムを理解し、その理解に基づき新たに
生命システムを制御・創成することを目指して研究を進めている。本講演ではまず、我々の研究室で開発
したRNAテクノロジーによる遺伝子発現や細胞運命の制御研究について紹介し、それらを活用した医療応
用の可能性について議論したい。初めに、細胞の状態に応じて遺伝子発現を制御できる「RNAスイッチ技
術」について紹介する。私たちは、特定のタンパク質やマイクロRNA (miRNA)の発現に応答して、外来
mRNAからの翻訳を抑制、または活性化できるRNAスイッチ技術の開発に成功した。これにより、標的
とするRNA結合タンパク質やmiRNAを発現する生細胞を特異的に識別し、その運命を制御することが可
能になりつつある。特に最近、miRNAを検知して人工mRNAからの翻訳を活性化できる「ONスイッチ」
の開発に新たに成功し、細胞内でRNAからなる人工遺伝子回路を構築することで、不要な細胞を死滅さ
せ、標的細胞のみを純化できる新手法を報告した。本技術はiPS細胞やiPS細胞から分化した心筋細胞の
純化にも適応できるため、機能性細胞の純化が課題となっている細胞治療や再生医療への応用が期待され
る。
次に、RNPからなるナノサイズの構造体の分子設計に基づくバイオナノテクノロジーやRNA創薬分野へ
の活用研究についても紹介したい。私たちはRNAとタンパク質からなるナノ構造を分子設計・構築するこ
とに世界に先駆けて成功し、RNPナノ構造を活用した細胞制御研究も進めている。また、RNA構造ユニ
ットをゲノムから抽出・ライブラリー化することで、標的タンパク質や低分子に結合するRNA構造モチー
フを取得できる新技術の開発にも成功したので、あわせて紹介したい。
最後に、今後のRNAを基盤とする合成生命システム分野の課題について紹介する。たとえば、生命の起
源における化学物質と生命の間をつなぐためにRNAは鍵となる分子と考えられているが、RNAワールド
やRNPワールドが、いかに原始生命システムをつくり出したのかということはほとんど明らかになってい
ない。これらの解決を目指した最近の研究についても紹介し、合成生命システム創成分野を開拓するため
の展望を議論したい。(齊藤 博英 京都大学 iPS細胞研究所 教授)