DNA配列間の情報交換により品質を管理する機構の発見(8月25日)(ゲノム再生研究分野)

ゲノムとはその生物の持つ全遺伝情報であり、DNA配列として細胞に収納されています。ヒトのゲノムは2003年に解読されましたが、短い配列(数十〜数キロ塩基)を繋ぎ合わせて全体を組み立てる方法を用いたため、ゲノムの半分近くを占める反復配列の領域の構造を正確に決めることはできませんでした。

近年英国のオックスフォード・ナノポア社や米国のPacBio社が、連続した長い配列を解読可能な装置を開発しました。これらの解析装置では、数十〜数百キロ塩基のDNA配列を解読することができるため、これまで不可能だった数キロ塩基(数kb)以上の繰り返し配列の解析が可能になりました。

この技術を用い、ゲノム再生研究分野の堀優太郎助教と小林武彦教授は、山陽小野田市立山口東京理科大学薬学部の嶋本顕教授との共同研究で、ゲノム中で最大の反復遺伝子であるリボソームRNA遺伝子(200~700コピー、rDNA)の全体構造を解析しました。その結果、これまでのrDNAの約3割は異常な構造を持っているという定説を覆し、99.8%は規則正しい直列反復構造をとっていることを解明しました。しかも近接するコピーほどその構造やメチル化修飾パターンが似ていること、また日本人に共通した特徴的な配列も発見しました。さらには、寿命が短くなる遺伝病の細胞では、構造変化の割合が増えていることもわかりました。

以上の発見からrDNAには、配列間の情報の交換により均一化する品質管理機構が存在することがわかりました。本成果は、ゲノムの異常で引き起こされる老化やがん化研究の基礎研究として、重要だと考えられます。


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