肝硬変に対するエクソソームを用いた新たな治療法の可能性 -肝硬変への新たな再生医療を目指して -(3月31日)(発生・再生研究分野、ゲノム情報解析研究分野)

新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の寺井崇二教授、土屋淳紀講師、竹内卓特任助教は、東京大学定量生命科学研究所発生・再生研究分野の宮島篤特任教授、同研究所ゲノム情報解析研究分野の白髭克彦教授、東京医科大学医学総合研究所分子細胞治療研究部門の落谷孝広教授、大阪大学大学院医学系研究科免疫細胞生物学の石井優教授、菊田順一准教授との共同研究で、日本に患者が40万人程度いると考えられる肝硬変に対し、間葉系幹細胞(#1)から産生され非常に小さく、安定な細胞外小胞・エクソソーム(#2)がマクロファージ(#3)を介して治療効果を発揮することを明らかにしました。またインターフェロンγ(#4)で刺激した間葉系幹細胞の産生するエクソソームは肝硬変に対する治癒促進効果をもつマクロファージを誘導する為に必要な物質を含むことも明らかにしました。この成果は、肝硬変に対する新たな有効物質の同定や、エクソソームを用いた新たな治療法の開発につながる可能性があります。

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#1. 間葉系幹細胞:骨髄、脂肪組織、臍帯組織、歯髄などに含まれる細胞で、比較的培養が容易で、他家細胞(他人の細胞)を用いても異常な免疫反応を起こすことなく、抗炎症、抗線維化、抗酸化、血管新生などの作用をもたらすことが知られています。現在このような効果を期待し、多くの分野で間葉系幹細胞を用いた治療が一部実臨床で用いられたり、治験が行われたりしています。

#2. エクソソーム:細胞から分泌される脂質二重膜で覆われた直径50-150 nm(ウイルスと同じくらいの大きさ)の細胞外小胞です。その表面には細胞膜由来の脂質、タンパク質を含み、内部には核酸(マイクロRNA、メッセンジャーRNA、DNAなど)やタンパク質など細胞内の物質を含んでいます。近年、エクソソームはこれらの物質を介した細胞間情報伝達に非常に重要な働きをすることがわかっています。現在、エクソソームを利用した診断、治療への応用展開への流れが世界で加速しています。

#3. マクロファージ:白血球の一種で直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、肝臓では特に多く分布しています。自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っています。また、生体内をアメーバ様運動する遊走性の食細胞で、死んだ細胞やその破片、体内に生じた変性物質や侵入した細菌などの異物を捕食して消化し、清掃屋の役割を果たします。肝臓では、線維化悪化にも改善にも働くことが知られ、線維化改善をさせる性質を持つマクロファージへ誘導することが重要と考えられています。