溶液中の蛋白質構造を正確に評価するための新規解析法を開発―構造評価の妨げとなる凝集の影響を実験データから除去―(6月8日)(クロマチン構造機能研究分野)

京都大学複合原子力科学研究所 杉山正明教授、守島健 同助教、自然科学研究機構生命創成探究センター 加藤晃一教授(分子科学研究所/名古屋市立大学兼任)、東京大学定量生命科学研究所 胡桃坂仁志教授らの研究グループは、溶液中の目的蛋白質の正確な構造を求めるために、構造評価の妨げとなる凝集の影響を実験データから除去する新たな解析方法を開発しました。

 X線や中性子を用いた小角散乱法(SAS)は溶液中の蛋白質の構造を解析する強力な測定法ですが、溶液中に僅か数%程度の凝集が存在するだけで目的蛋白質の正確な散乱プロファイルが得られなくなり、誤った構造の解釈に繋がる危険性を孕んでいることが長年の問題でした。そこで本研究では、超遠心分析(AUC)で測定される凝集の存在比率を用いて散乱プロファイルから凝集の影響を取り除く解析法(AUC-SAS法)を開発しました。今後はAUC-SAS法で解析した散乱プロファイルから得られる構造を元にして、従来よりも高度な生物学的議論が可能になると期待されます。また、AUC-SAS法は解離会合平衡系のように複数の蛋白質成分が共存する多成分溶液に対しても応用可能で、特定成分を選択的に構造解析することができます。生体により近い環境の複雑な多成分溶液中での蛋白質構造を解析するにあたって、AUC-SAS法は不可欠な手法となることが期待されます。

本研究成果は、2020年6月8日にイギリスの国際学術誌Communications Biologyにオンライン掲載されました。

詳しい内容はこちら