高次ゲノム構造が遺伝子発現を制御する仕組みを解明(2月28日)(遺伝子発現ダイナミクス研究分野)

転写制御において中心的な役割を担うのはエンハンサー(注1)と呼ばれる調節配列です。エンハンサーは転写活性のON/OFを切り替えるスイッチとして働くことで、個体発生における遺伝子発現を緻密に制御しています。重要なことに近年、ゲノムはTopologically Associating Domain(TAD、注2)と呼ばれるループ構造を基本単位として緻密に折り畳まれていることが理解されてきました。つまりエンハンサーは、こうしたゲノムの三次元的な折り畳み構造の中において標的遺伝子に作用し、転写活性を制御していると考えられています。しかし、そもそもTADがエンハンサーによる転写制御においてどのような機能を果たすかについては未解明のままでした。

今回、東京大学定量生命科学研究所の余越 萌助教、深谷 雄志講師らの研究チームは、TAD形成が転写活性に与える影響をショウジョウバエ生体内において直接可視化するライブイメージング技術を構築することに成功しました。その結果、エンハンサーにはTAD形成に依存して初めて機能を発揮するものと、依存せずに働くものの二種類が存在することを発見しました。さらに、こうした依存性の違いは「遺伝子とエンハンサーの相対的な位置関係」によって生み出されていることを解明されました。以上の成果は、生物の持つゲノム情報がどのように発生段階や環境変化に応じて正確に読み出されているのかという基本原理の解明につながるものと期待されます。

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