定量研インタビュー 広田 卓さん
神経計算研究分野(代表:船水章大 講師)
博士課程後期
広田 卓
定量研の魅力について教えてください。
定量研には複数の研究科の学生が所属しており、定量研内の研究発表会や忘年会などを通して、普段交流できない他研究科の学生と議論できる機会が多くある点が、定量研の魅力だと思います。隣り合った研究室同士で、全く異なる分野の研究をしているような環境は、日本には多くないのではないでしょうか。
研究テーマについて教えてください。
大脳皮質の一次感覚野は、かつて感覚特異的であると考えられていましたが、現在では感覚遮断後に機能的再編成を遂げることが広く認識されています。例えば、視覚や聴覚を失うと、それらの感覚に通常関連する脳領域が、残存する感覚によって再利用されることが知られています。しかし、感覚が正常に発達した個体における感覚間可塑性を支配する原理や、それが行動に与える影響については、未解明です。そこで、私の研究では、マウスをモデルとし、視覚および聴覚を対象に、一方の感覚における学習が他方の感覚へと汎化する神経基盤を検証しています。


修士課程から博士課程で分野を変えたとのことですが、新たな分野に挑戦するのに、定量研を選んで良かったと思う点を教えてください。
定量研には多くの研究分野があり、自身のバックグラウンドとは大きく異なる分野も多数あったため、研究交流会で学べることが非常に多くありました。特に定量研は分子生物学の分野に強く、その分野の背景知識がほとんどなかった私にとっては、自身の研究視野を広げる上で、定量研という環境がすごく合っていたと感じています。それに、私の研究室が含まれる定量研の本館は、2024年に改装されたばかりで、綺麗な環境で心も新たに研究に打ち込めていることも、定量研を選んで良かったと思える点です。
入試に際し、どのような対策を行いましたか?
博士の入試については、知り合いがいなかったこともあり、対策できるほどの情報が得られず具体的な対策はできませんでした。ただ、博士課程入学に至るまでに、志望研究室での面接と研究科での面接の2度の面接があり、そこで修士時代の研究に真摯に取り組んでいたことを強くアピールできたことが、合格につながったと思います。博士課程からの入学を考えている人は、当たり前かもしれませんが、修士までの研究内容について、分野の異なる人にもわかりやすく説明できるように準備しておくことが重要だと思います。
修士時代の学生生活について教えてください。
学部から修士までは同じ研究室に所属しており、主に生体医工学の分野で4年間研究に取り組みました。具体的には、 (1)尿が膀胱内に蓄積する生体情報処理を数理モデル化することで次の排尿時刻を予測するシステムの開発や,(2)健常者と脳卒中患者の違いを考慮した体幹機能モデルを構築し、脳卒中患者の身体機能の回復程度を推定するといった 2つのテーマに取り組みました。研究期間の半分はコロナ禍ではありましたが、研究室にも恵まれ、十分な研究成果を挙げることができ、非常に満足のいく研究生活だったと改めて実感します。

研究室の選びに関してアドバイスをお願いします。
まず、PIとの相性は極めて重要と考えます。特に学生であれば、研究室内で最もコミュニケーションをとるべき相手はPIになるため、その相性は研究生活を左右します。研究室に入るまでは、PIの人柄までを把握することは難しいですが、研究室に所属するメンバーに前もってよく話を聞き、研究室を慎重に選ぶことをお勧めします。 次に研究内容!くらいの感覚で研究室を選ぶと、個人的には楽しい研究生活を送れると思います。
所属している研究室はどのような雰囲気ですか。
学生間の仲がかなり良い方かと思います。始まりたてで研究の蓄積があまりなかったため、私の所属する研究室では、実験装置や解析環境の立ち上げをほぼ全メンバーが行っています。当然苦労する部分も多いですが、日々の議論を積み重ねて、徐々に自分の研究が洗練されていくことを実感できるのは良いものです。学生同士でのジャーナルクラブもときどき開催しており、研究好きなメンバーが多い印象です。
留学は視野にありますか?
はい、PhDを取得したあとに、海外で研究することを視野に入れています。今年は、ルーマニアで開催されたTransylvanian Experimental Neuroscience Summer School (TENSS) 2024に参加して、システム神経科学の最新の計測技術と知識を習得してきました。論文でしか名前を見たことのないような研究者に直接指導してもらえる上、世界中の同じ志を持った同年代の人と出会えた、とても良い機会でした。今後の学生生活でも、このようなサマースクールや国際学会に積極的に参加して、先端研究を学びながら、海外でのコネクションを作っていきたいです。


聞き手:定量研オンキャンパスジョブHP作成チーム
写真撮影:西本 翔裕
インタビュー時期:2024年12月