定量研インタビュー 渡邉 紘介さん

ゲノム情報解析研究分野(代表:白髭克彦 教授)
大学院総合文化研究科 博士課程

定量研の魅力について教えてください。

 非常に幅広い分野の専門家が、とても高いレベルで多く在籍していることです。近年の研究では、WETと言われる手を動かず実験だけでなく、DRYと言われるデータ解析の分野が必須になります。WETはWET、DRYはDRYの研究室で分かれてしまうことも多いですが、定量研では一つの研究室にどちらも高いレベルで知見のある方が多くいます。これは近年のレベルの高い研究を進める上で非常に大きなアドバンテージになっています。

研究テーマについて教えてください。

 私は社会人博士課程学生であり、頭髪を中心とした化粧品メーカーの科学者として加齢に伴うヒト毛髪の変化を研究しています。例えば白髪や加齢とともに発生する形態変化した毛髪の研究です。これらの毛髪の組織を単細胞にし、シングルセルレベルで遺伝子発現変動解析を行います。毛髪はとても小さな組織ですが非常に多くの細胞がダイナミックに働くことで毛髪を形成していきます。これが加齢とともにどのようなエラーを起こすのかを明らかにしようとしています。

定量研に入る前と後では定量研に対する印象は変わりましたか。

 定量研はその名の通り、データ解析によっているという印象がありました。しかし、実際は多くのWETでの実験によって得られたビッグデータをDRYの力で解析していくことで、生命の真理に近づく研究を行える、非常に魅力的な場です。また、分野を跨いだ研究者がお互いに密に、そして気軽にコミュニケーションを行える場であることも、社会人博士課程学生であるからこそ、非常に価値の高い場であると認識しました。ビジネスをしていく中での研究活動は限られた科学者としかコミュニケーションできず、思考が凝り固まりがちです。定量研はその中で非常にオープンな交流の場となっており、入った後でそのことを多くのタイミングで実感しています。

研究室の選びに関してアドバイスをお願いします。

 研究室を選ぶ際には、ぜひ自分の心からの興味を持って研究できる分野の専門家がいるかどうかを見てください。当たり前ですが、研究は失敗の連続であり、大変タフな研究活動が必要となります。その中で自分と同じ分野の専門家は、大きな研究の羅針盤になります。どんな手法が妥当であり、本当に真実に近づくにはどんなアプローチが最適か。これを相談でき、共に議論できることは研究者として成長する非常に大きな糧となります。

所属している研究室はどのような雰囲気ですか。

 オープンな議論がしやすく、自分とは違う分野に対しても非常に興味を持ってもらいやすく、新しい研究にも寛容な雰囲気です。また、海外からの学生も多く、さらに海外の研究室とも交流が多いので、アカデミアだけでなく産業分野においても必須である英語での議論の機会が非常に多いのは大きなアドバンテージです。もしアカデミア・産業分野に限らず研究者を志すなら、英語でのコミュニケーションや議論ができることは必須になります。これを日常で経験できるのはとても貴重な経験になることも、研究室の魅力の一つです。多文化を深く許容して非常に刺激的な雰囲気も特徴です。

卒業後はどのような進路を考えていますか。

 私は社会人博士課程学生ですので、博士号を取った後に産業分野に戻ります。しかし、産業分野においても、博士号を持ってようやく研究者として認められることも多いです。特に海外での展開はどの企業も必須の中、博士号がないと海外研究者との交流も一歩引いて見られがちです。博士号を取った後は、専門になる毛髪研究分野にて日本を代表した研究者になるため、さらに研究を重ねていきます。産業における基礎研究によって、日本のものづくりのレベルを底上げしつつ、世界中の最終消費者に喜ばれる製品を作っていきたいと考えています。


聞き手:定量研オンキャンパスジョブHP作成チーム
写真撮影:田辺隆三、瀧澤国敏
インタビュー時期:2023年12月