定量研インタビュー 何 承翰さん
クロマチン構造機能研究分野(代表:胡桃坂仁志 教授)
大学院理学系研究科所属 博士課程
定量研で成長を感じたことについて教えてください。
成長を感じた事は研究と研究以外いくつかあります。まず、研究に関してですが、一番成長を感じたのはやはり自分の実験と解析の腕が上がったと実感しました。特に構造解析に関しては、クライオ電子顕微鏡や解析用のパソコンなどの設備が整ったおかげで、短時間で数種類のサンプルの解析ができました。それにより、様々な知見が得られ、将来の解析につながると思います。
研究に限らず、他にも成長を感じたことが二つあります。一つは、学生代表として学生交流会を企画することから様々な経験が得られました。例えば、交流会で講師を招待する際、講師の先生方とメールのやりとりだったり、講演内容の相談だったり、今までしたことのない体験ができました。最初はやり方がよくわからなくて苦労しましたが、やっているうちに段々慣れてきて、気づいたらもう学生代表になる前よりも成長しました。
そして、もう一つは定量研のオンキャンパスジョブ(OCJ)に参加することで、ホームページ(HP)作成について学ぶ機会ができました。定量研のOCJには、様々な種類の仕事があるのですが、その中でも私は定量研HP作成チームに参加しました。HP作成でいうとちょっと大袈裟かもしれませんが、実際の内容としては今の定量研HPを改良し、より学生にアピールできるHPにすることが目的です。それで、同じチームの人と何回もミーティングを開き、今のHPをブラッシュアップしていくかについて議論しました。実際、このインタビューもそのミーティングの時で出てきたアイディアの一つで、今こうして自分がインタビューに答えることになりました(笑)。


研究面における定量研の魅力とは何でしょうか?
前にも少し触れましたが、研究にあたって、定量研の魅力は世界トップの先生方や研究機材だと思います。学生交流会では、学生の発表を通して各研究室の研究成果について学ぶことができますが、どの研究室の成果もすごいと毎回思いました。また、様々の分野のトップ先生が定量研に集まっているおかげで、幅広い研究成果を出しています。それにより、学生交流会で違う分野の研究について学ぶこともでき、時には他の分野の結果と自分の研究結果がオーバーラップすることもあり、有意義な議論ができて大変面白かったです。

研究テーマについて教えてください。
私の研究テーマは、ヘテロクロマチン基盤構造の解明です。研究分野としては構造生物学で、主にクライオ電子顕微鏡を用いた構造解析を行なっております。
真核生物のゲノムDNAはクロマチンを形成し、細胞核内に収納されています。クロマチンの基本単位であるヌクレオソームは、DNAがヒストンH2A、H2B、H3、H4各2分子ずつ含むヒストンオクタマーに巻きついている構造体です。クロマチンは動的に構造変化することで、遺伝子のON/OFFを制御しています。
ところが、核内のクロマチンは均一な状態ではなく、凝縮しているヘテロクロマチンと弛緩しているユークロマチンに分類することができます。ヘテロクロマチンは核膜の周辺にたくさん存在し、遺伝子発現の抑制に関わっていると考えられています。また、ヒストンH3の9番目のリシンのトリメチル化修飾(H3K9me3)は、ヘテロクロマチンの代表的なヒストン修飾として知られています。H3K9me3にHeterochromatin Protein 1(HP1)が特異的に結合することで、ヘテロクロマチンが形成されます。
私が所属している胡桃坂研究室は、2018年にヘテロクロマチンの基盤構造であるHP1-ジヌクレオソームのクライオ電子顕微鏡構造を報告しました。しかし、その構造ではいくつかの課題がまだ残されており、現在はそれらの課題の解決に取り組んでおります。それらの課題ができれば、遺伝子制御機構のさらなる知見が得られると信じております。
所属している研究室はどのような雰囲気ですか?
私が所属している研究室、胡桃坂研は一言で言えば明るくて楽しい研究室です。その理由は色々ありますが、一番重要なのは胡桃坂先生がいつも活気に溢れています。ご存知かもしれませんが、胡桃坂先生は研究で多忙にも関わらず、自分のYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@-kurumizaka–hitoshi-6967)もあり、定期的に研究テーマ関連の曲をアップロードしています。また、先生は積極的にスタッフや学生とコミュケーションをとることにより、研究室内はよく活発な議論が行なわれています。それにより、学生と教授の間の交流不足による問題は起こりません。さらに、研究室に所属しているスタッフや学生の数も多いため、何か問題に遭遇してしまったら、大体は対応方法をしている人がいるので、一人で落ち込むケースもほとんどありません。研究室のメンバーが多いおかげで、寂しさもあまり感じません。


留学は視野にありますか?
はい、ポスドクは海外に行くのも視野にあります。国で絞ると言うよりかは、研究分野からラボを探していきたいと考えております。今まで、クロマチンの構造研究をしてきました。やはりクロマチンは大変面白い分野だと実感しました。そのため、構造解析でなくてもいいので、とりあえずクロマチンの研究している世界中の研究室から探していきます。
聞き手:定量研オンキャンパスジョブHP作成チーム
写真撮影:田辺隆三、瀧澤国敏
インタビュー時期:2023年2月