膜蛋白質解析研究分野沖縄のサンゴ礁にすむ海洋生物から強力な細胞増殖阻害物質を発見抗がん剤への応用が期待| IQB Institute for Quantitative BiosciencesJp化学物質を発見し、イエゾシドと名付けました。詳細な解析の結果、イエゾシドは細胞内にある小胞体膜上のカルシウムイオンポンプ(SERCA)*2の働きを強力に抑える作用をもち、その強さはこれまで人類が発見した化学物質の中で2番目に強いものであることを明らかにしました。さらに研究チームはイエゾシドの化学合成にも成功し、大量供給ルートを開拓しました。SERCA は、近年がんの治療標的として注目を集めているタンパク質で、実際に SERCA を標的とする前立腺がんの治療薬開発が進められています。そのため、今回発見したイエゾシドが、抗がん剤開発に応用されることが期待されます。豊島 近(東京大学定量生命科学研究所 膜蛋白質解析研究分野・特任教授)雑誌名:Journal of the American Chemical Society論文タイトル:Structural Determination, Total Synthesis, and Biological Activity of Iezoside, a Highly Potent Ca2+-ATPase Inhibitor from the Marine Cyanobacterium Leptochromothrix valpauliae著者:Naoaki Kurisawa, Arihiro Iwasaki*, Kazuya Teranuma, Shingo Dan, Chikashi Toyoshima, Masaru Hashimoto, and Kiyotake SuenagaDOI 番号:10.1021/jacs.2c04459発表のポイント:◆沖縄県にある伊江島のサンゴ礁に生息する海洋シアノバクテリアから、極めて強力な細胞増殖阻害物質を発見した。◆作用解析の結果、がんの治療標的として注目されているタンパク質の働きを、史上2番目の強さで抑えることを明らかにした。◆化学合成による大量供給ルートの開発にも成功した。抗がん剤開発への応用が期待される。発表の概要:慶應義塾大学大学院理工学研究科の栗澤尚瑛(博士課程3年)、寺沼和哉(修士課程2年)、同大学理工学部の岩崎有紘専任講師、末永聖武教授は、伊江島(沖縄県伊江村)のサンゴ礁で採集した海洋シアノバクテリアから、抗がん剤への応用が期待される強力な細胞増殖阻害物質を発見しました。生物がつくる物質には、病気の治療に有効な作用をもつものが含まれます。こうした物質を新しく発見するために、研究チームは沖縄・奄美地方の海洋生物を対象に探索を続けてきました。その結果、伊江島のサンゴ礁で採集した海洋シアノバクテリアから、極めて低濃度で細胞の増殖を抑える新しい14
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