IQB Handbook
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90IQB HANDBOOKResearch Center for Biological VisualizationヒストンやRNAポリメラーゼIIの翻訳後修飾を生きた細胞で検出するため、それらの修飾に特異的なモノクローナル抗体を作製し、抗体由来の蛍光標識抗原結合断片や遺伝子コード型プローブを開発した。特に、遺伝子コード型のプローブは生体内での解析や長時間の解析に有用である。これらの生細胞内修飾可視化プローブを用いて、転写活性化に伴うクロマチン修飾動態の解析を行っている。これまでに、ステロイド系ホルモンによる標的遺伝子アレイの活性化のキネティクスを計測し、ヒストンH3のアセチル化が転写の開始から伸長にいたる過程を促進することを明らかにした。現在、熱ショックストレスによるサテライト遺伝子からの非コードRNAの転写活性化や胚性ゲノム活性化の際のヒストン修飾の変化について計測を行っている。一方、遺伝子発現の抑制に関しては、X染色体の不活性化に伴うクロマチン構造変化を追跡している。また、生細胞解析とエピゲノム解析を融合させるために、イメージングした少数の細胞のエピゲノム情報を取得する方法の開発を進めている。細胞核機能動態可視化分野Laboratory of Functional Nuclear Imaging教授(委嘱) 木村 宏 / 博士KIMURA Hiroshi (Ph. D.), ProfessorResearch Center for Biological VisualizationRNAは転写後に様々な修飾を受けて成熟し、はじめてその本来の機能を発揮します。これまでに160種類を超えるRNA修飾が、様々な生物種から見つかっています。RNA修飾はセントラルドグマの様々な過程で遺伝子発現を調節することが明らかになりつつあり、エピトランスクリプトームと呼ばれ、転写後における新しい調節機構として、注目されています。私たちは独自に、細胞内に存在する微量なRNAを単離精製する技術や、微量RNAの高感度質量分析法(RNA-MS)を開発しています。これらの手法を駆使することで、新しいRNA修飾や修飾酵素の発見と、その機能解析を通じ、RNA修飾が関与する生命現象を探究しています。また、RNA修飾の欠損が原因で生じるヒトの疾患を世界で初めて報告し、”RNA修飾病”という疾患の新しい概念を提唱しています。エピトランスクリプトミクス研究分野Laboratory of Epitranscriptomics教授(兼務) 鈴木 勉 / 博士(科学)SUZUKI Tsutomu (Ph. D.), Professor所属:Affiliation : 転写とヒストン修飾の生細胞ダイナミクス東京工業大学Tokyo Institute of Technology所属:Affiliation : RNA修飾の多彩な機能と生理学的意義東京大学 大学院工学系研究科Graduate School of Engineering, UTokyo

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