IQB Handbook
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89IQB / INSTITUTE FOR QUANTITATIVE BIOSCIENCESResearch Division for Applied Life Sciencesヒト初期発生過程において遺伝子発現がダイナミックに制御されていることは知られており、先天異常症候群の原因遺伝子の多くは、発生過程に重要な役割を果たす転写制御因子です。しかしながら、それら転写制御因子がどのように協調して遺伝子発現制御を行っているかは完全には解明されていません。近年、次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析といった網羅的遺伝子検査技術が導入され、先天異常症候群の新規原因遺伝子の同定が容易になってきています。その結果として多くの転写制御因子をコードする遺伝子の変異により先天異常症が発症することがわかってきました。しかしながら、その転写制御因子の異常による病態発症メカニズムは大部分が謎のままです。先天異常が未だに新生児死亡の原因の上位であることからも、先天異常発症機構を理解する上でも、先天異常症候群の病態機構解明は喫緊の課題といえます。我々の研究室では、CHOPS症候群やARCN1関連症候群等の新規先天異常症候群をモデルにヒト初期発生に重要な役割を果たす遺伝子発現制御機構の解明を目指しています。希少疾患分子病態研究分野Laboratory of Rare Disease Research客員准教授 泉 幸佑 / 博士IZUMI Kosuke (Ph. D.), Visiting Associate ProfessorResearch Division for Applied Life Sciencesタンパク質とタンパク質、DNA、RNA、糖、脂質、金属、低分子化合物、その他さまざまな分子との相互作用について、『相互作用予測: 与えられたタンパク質が他の分子と相互作用するかどうかを予測』『相互作用部位予測: 与えられたタンパク質の中で他分子と結合する残基はどれか、タンパク質の構造が得られている場合は結合部位がどこかを予測』『ドッキング予測: 複合体の構造を予測』の3つのアプローチから研究を行っており、これらを統合した予測システムの開発にも取り組んでいます。統計的手法、機械学習、タンパク質構造比較、エネルギー最小化など、目的に応じて多様な手法を用いており、また、分子シミュレーションを用いて、物理的な相互作用を詳細に予測・解析する研究も行っています。そのほか、翻訳後修飾予測、tail anchorタンパク質予測、脂質結合タンパク質の機能分類予測、不棟タンパク質予測などの機能予測の手法も開発しています。2018年度は、とくに、タンパク質とタンパク質、DNA、RNA、脂質、金属との相互作用部位予測の手法を開発し、世界最高レベルの予測精度を達成しました。生物情報工学研究分野Laboratory of Bioinformatics and Computational Physics教授(兼務) 清水 謙多郎 / 博士SHIMIZU Kentaro (Ph. D.), Professor所属:Affiliation : 先天異常症候群の研究から、発生過程における遺伝子発現制御機構の解明を目指します。フィラデルフィア小児病院Children's Hospital of Philadelphia所属:Affiliation : タンパク質の相互作用予測・機能予測東京大学 大学院農学生命科学研究科Graduate School of Agricultural and Life Sciences, UTokyo

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