IQB Handbook
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78IQB HANDBOOKResearch Center for Biological VisualizationLearn more ▶ P15転写制御において中心的な役割を担っているのはエンハンサーと呼ばれる調節DNAです。エンハンサーは配列特異的な転写因子やコアクチベーターとの結合を介して標的遺伝子の転写活性を時空間的に制御しており、発生タイミングや環境変化に応じた緻密な遺伝子発現調節を可能にしています。現在、ヒトゲノム中には少なくとも40万以上ものエンハンサーが存在すると見積もられており、1つの遺伝子に対しておよそ20近くのエンハンサーがその発現制御に働いていると考えられます(ENCODE Consortium, Nature 2011)。近年、エンハンサーを介した遺伝子発現制御が、高等真核生物の持つ複雑な形態やその多様性を生み出すことが相次いで報告されています。またエンハンサーによる転写制御が正常に機能しなくなることが、癌をはじめとする疾患の原因となることも明らかとされてきました。しかし、このようにエンハンサーを介した転写制御の生物学的重要性がかつてないレベルで明らかとされつつある一方で、どのようにエンハンサーが働いているのかという根本的な仕組みについては依然として大きな謎に包まれています。我々の研究室では、生きたショウジョウバエ初期胚において転写活性を可視化する独自のライブイメージング技術を駆使して、エンハンサーが遺伝子発現を制御する動作原理を1細胞解像度で理解することを目指します。エンハンサーは通常、標的遺伝子から数kb~数百kbほど離れて存在していますが、こうした遠位エンハンサーがどのように標的遺伝子と相互作用し、その結果どのように転写動態が制御されているかを多角的に解き明かしたいと考えています。ライブイメージングに加え、ゲノム編集やオプトジェネティクス、生化学、定量画像解析などあらゆる手法を総動員することによって、これまでにない新たな切り口からセントラルドグマを理解することを目指します。● Lim B, Heist T, Levine M, Fukaya T. Visualization of Transvection in Living Drosophila Embryos. Mol Cell. 2018 Apr 19;70(2):287-296.e6. DOI:10.1016/j.molcel.2018.02.029● Eritano AS, Bromley CL, Bolea Albero A, Schütz L, Wen FL, Takeda M, Fukaya T, Sami MM, Shibata T, Lemke S, Wang YC. Tissue-Scale Mechanical Coupling Reduces Morphogenetic Noise to Ensure Precision during Epithelial Folding. Dev Cell. 2020 Apr 20;53(2):212-228.e12. DOI: 10.1016/j.dev-cel.2020.02.012. ● Yokoshi M, Segawa K, Fukaya T. Visualizing the Role of Boundary Elements in Enhancer-Promoter Communication. Mol Cell. 2020 Apr 16;78(2):224-235.e5. DOI: 10.1016/j.molcel.2020.02.007. 講師 深谷 雄志 / 博士(生命科学)FUKAYA Takashi (Ph. D.), Lecturer助教 余越 萌 / 博士(医学)YOKOSHI Moe (Ph. D.), Research Associate特任研究員 川崎 洸司 KAWASAKI Koji, Project Researcher学術支援職員 滝下 仁美 TAKISHITA Hitomi, Project Academic Support StaffMEMBERACHIEVEMENT遺伝子発現ダイナミクス研究分野Laboratory of Transcription Dynamics講師 深谷 雄志 / 博士(生命科学)FUKAYA Takashi (Ph. D.), Lecturer専門:分子生物学Research : Molecular Biology大学院担当:Admission : 総合文化研究科Graduate School of Arts and Sciences

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