76IQB HANDBOOKResearch Center for Biological VisualizationLearn more ▶ P37払耳勒心とわざわざ序文に紹介された稗田阿礼の並外れた記憶の才によって古事記は成立したとされています。当時から記憶という脳の働きは自ずと明らかだったのでしょう。記憶はよく知られた不思議な脳の働きの一つで、今でも不思議であることに変わりはなく、私たちの興味を惹きつけてやみません。現在では、記憶を形成しつつある神経細胞の活動をまさにその時に顕微鏡下で観察できるようになっておりますが、まだまだ多くの部分は謎のままです。連合学習記憶は単純な記憶の一形態でありますが、過去のできごとを思い出すこととメカニズムを共有していると考えられます。本研究室ではショウジョウバエの匂い連合学習記憶を対象に、記憶の理解を研究テーマとしています。個々の神経細胞を制御することで、記憶回路にロジックを探り、顕微鏡下でショウジョウバエの記憶形成を再現し、その時に機能する神経系の働きを解析しています。一細胞レベルで“記憶する細胞”を観察し、そこに働く分子メカニズムを理解することが目的です。人を人たらしめているものは私たちの脳の活動に他なりません。私たちのゲノムが地球上の原初の生命からただの一度も途切れることなく連綿と受け継がれてきたことを思えば、脳の活動を支える神経回路の構造と機能もその緩やかな進化の例外ではありえません。私たちの脳機能の萌芽はショウジョウバエのそれに見ることができると考えてもあながち荒唐無稽ではないでしょう。私たちの脳の働きの前提要件は、Daniel Dennettの言を一部借りれば、経験から得られた仮説をオフラインで実地なしに検証することが可能な回路を備えていることでありましょう。その回路機能を代表するものが記憶であると考えます。記憶によって生物は経験を脳にコードし、オフラインで再生して思考実験に供することができるのです。人はこの回路の働きをモニターするもう一つの回路を持っている生物かもしれません。● Tsuneizumi K, Nakayama T, Kamoshida Y, Kornberg TB, Christian JL, Tabata T. Daughters against dpp modulates dpp organizing activity in Drosophila wing development. Nature. 1997 Oct 9;389(6651):627-31. DOI:10.1038/39362● Tanimoto H, Itoh S, ten Dijke P, Tabata T. Hedgehog creates a gradient of DPP activity in Drosophila wing imaginal discs. Mol Cell. 2000 Jan;5(1):59-71. DOI:10.1016/s1097-2765(00)80403-7● Yamazaki D, Hiroi M, Abe T, Shimizu K, Minami-Ohtsubo M, Maeyama Y, Horiuchi J, Tabata T./Two Parallel Pathways Assign Opposing Odor Valences during Drosophila Memory Formation. / Cell Rep. 2018 Feb 27;22(9):2346-2358. / 10.1016/j.celrep.2018.02.012教授 多羽田 哲也 / 理学博士TABATA Tetsuya (Ph. D.), Professor講師 山崎 大介 / 博士（理学）YAMAZAKI Daisuke (Ph. D.), Lecturer助教 阿部 崇志 / 博士（理学）ABE Takashi (Ph. D.), Research Associate技術専門職員 前山 有子MAEYAMA Yuko, Technical Specialist学術支援職員 滝下 仁美 TAKISHITA Hitomi, Project Academic Support Staff学術支援職員 佐藤 美佐子 SATO Misako, Project Academic Support StaffMEMBERACHIEVEMENT神経生物学研究分野Laboratory of Neuroscience教授 多羽田 哲也 /理学博士TABATA Tetsuya (Ph. D.), Professor専門：神経科学Research : Neuroscience理学系研究科Graduate School of Science 大学院担当:Admission :
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