IQB Handbook
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5IQB / INSTITUTE FOR QUANTITATIVE BIOSCIENCESDIRECTOR'S MESSAGE東京大学 定量生命科学研究所 所長 白髭 克彦 SHIRAHIGE Katsuhiko, DirectorInstitute For Quantitative Biosciences; IQBThe University of TokyoTRANSFORMING QUANTITATIVE EXPERIMENTATIONINTO BIOLOGICAL INSIGHT.東京大学定量生命科学研究所(Institute For Quantitative Biosciences; IQB)は平成30年4月1日に分子細胞生物学研究所からの改組により誕生しました。物理量により、あらゆる生命動態を記述できるような先端的研究をめざすべく、構造生物学、ゲノム学を駆使し、数学、物理、化学、量子化学などを柔軟に取り入れ、定量性と再現性を最重要視した新しい生命科学研究を展開します。 21世紀の生物学ではヒトゲノムプロジェクトによって2つの大きな変革がもたらされました。まず、第一に、ヒトおよびマウス、ハエ、酵母等モデル生物のゲノム塩基配列が全て明らかになり、生命を構成する因子が少なくとも有限なものとなりました。第二に、全ゲノムレベルでタンパク、DNA、RNA、代謝物、さらにそれらの相互作用を解析するための網羅的計測技術が開発されました。これらの技術は日進月歩の進歩を遂げており、さらなる先進的な測定技術の登場やデータベースの充実化へとつながっています。そして、現在の生命科学では、こういった膨大かつ多様なデータを統合的に解釈し、多角的に丸ごと生命現象を捉えモデル化するデータ駆動型の研究を行うことが可能となりました。このような研究は基本的な生命現象の解明のみならず社会的な要請となっている効率的な創薬、治療、診断といった臨床応用の側面でも必須となっています。また、データ駆動型研究を展開するためには、実験データの高い再現性、定量性が前提となることは言うまでもありません。一方、生物系の研究はややもすればストーリー先行になりがちであり、そういう研究の中には再現性の低い、杜撰な方法論に基づいた研究が多いのも事実です。 このような背景のもと、定量生命科学研究所では、分生研時代の研究の卓越性と多様性を担保しつつ、個別研究の枠を取り払い、既存手法の刷新も含めた、より定量性を重視した新たな方法論を開発、所内外と広く共有しつつ研究を発展させて参ります。研究環境のソフト面、ハード面からのオープン化は当然のこととして、国内外の大学、研究機関、企業との連携も積極的に展開します。原子、分子、細胞、組織、個体それぞれの階層を繋ぎながら生命現象を様々な角度から詳細に記述し、生体分子の動作原理を高い精度で解明します。研究の再現性を何よりも大切にし、透明性の高い自由闊達な研究環境の確保と若手研究者の育成のための不断の努力のもとに、基礎生物学、医学生命科学の発展に寄与していく所存です。どうかよろしくお願いします。

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