IQB Annual Report 2019
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PLOS Biology論文タイトル:A widespread family of heat-resistant obscure (Hero) proteins protect against protein instability and aggregation著者:Kotaro Tsuboyama†, Tatsuya Osaki, Eriko Suzuki-Mat-suura, Hiroko Kozuka-Hata, Yuki Okada, Masaaki Oyama, Yoshiho Ikeuchi, Shintaro Iwasaki, andYukihide Tomari†(†責任著者)DOI 番号:./journal.pbio.掲載:http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/pressrelease//発表のポイント: □タンパク質は一般に熱をかけると固まる性質を持ちますが、加熱しても固まらないという奇妙な性質を持つタンパク質が、ハエやヒトなどにも数多く存在することを発見しました。□これらのタンパク質は、決まった構造を持たず「へろへろ」した性質を持ち、耐熱性で機能がよく分かっていないことから、Heroタンパク質と名付けられました。□Heroタンパク質は、疾患の原因となりうるタンパク質の凝集を防ぎ、ハエの寿命を延長させるなど、他のタンパク質を守る「ヒーロー」のように働くことが明らかとなりました。──────── タンパク質は一般に熱によって変性し、お互いに集まって凝集するという性質を持ちます。一方で、熱によって変性せず凝集しない熱耐性タンパク質は、これまで例外的であるとみなされ、そのようなタンパク質がどの程度存在するのか、またどのような機能をもつのかについては、不明なままでした。 今回、RNA機能研究分野の坪山幸太郎日本学術振興会特別研究員、泊幸秀教授らの研究チームは、熱耐性タンパク質がヒトやハエにも豊富に存在することを発見しました。これらのタンパク質は、決まった構造を持たず「へろへろ」した性質を持つこと、また熱耐性(Heat-resistant)であり、機能があまりわかっていない(Obscure)ことから、Heroタンパク質と名付けられました。 驚くべきことに、Heroタンパク質には、他の一般的なタンパク質を安定化し、変性や凝集から守る「ヒーロー」としての役割を果たしていることが明らかになりました。例えば、タンパク質の異常な凝集は神経変性疾患の原因となりうることが知られていますが、ヒトのiPS細胞からつくった運動神経やショウジョウバエ個体を用いた実験において、Heroタンパク質がこのような異常な凝集を強く抑制する効果を持つことが確認されました。また、タンパク質の不安定性は老化にも関連することが分かっていますが、Heroタンパク質を増やすと、ハエの寿命が割程度延長することも示されました。RNA機能研究分野Heroタンパク質の発見とその驚くべき機能~「へろへろ」したタンパク質は「ヒーロー」のように働く~坪山 幸太郎(RNA機能研究分野・大学院生)泊 幸秀(RNA機能研究分野・教授) 本研究成果は、今までほとんど着目されてこなかった、奇妙なHeroタンパク質の予想外の機能を示した画期的なものであると言えます。将来的には、Heroタンパク質を利用した医薬品開発など、様々な応用研究に発展することも期待されます。16| IQB Institute for Quantitative Biosciences

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