生化学72:1383-1397(2000)
大腸菌における分泌タンパク質の膜透過分子機構 −膜透過を駆動するSecA-SecGの構造変化−
西山賢一
分泌タンパク質の膜透過機構については様々な生物を対象に精力的に研究され、現在では分子レベルで膜透過機構が詳細に議論できるようになっている。大腸菌でも膜透過に関与する因子がほぼすべて同定され、各因子の機能が明らかになりつつある。中でも、ATPase活性を持つSecAと膜内在性因子SecGは、膜透過反応中、膜横断的な大きな構造変化を示すことが明らかとなり、これがタンパク質膜透過の直接的な駆動力であることが判明した。さらに、プロトン駆動力はSecAの構造変化を加速することによって膜透過を促進することが明らかとなった。最近では、SecA、SecGだけでなく、膜透過装置全体が大きな構造変化を示している可能性が明らかになりつつある。これらの構造変化を中心に、現在明らかになっている大腸菌におけるタンパク質の膜透過の分子構造を概説する。