日本細菌学雑誌55:517-526(2000)
グラム陰性細菌におけるリポ蛋白質の生合成機構ーリポ蛋白質の選別と外膜局在化機構を中心にー
薬師寿治、松山伸一、徳田元
グラム陰性細菌の細胞質膜と外膜には、脂質修飾されたリポ蛋白質が多数存在している。シグナルペプチドも持つ前駆体として合成されたリポ蛋白質は、細胞質膜を透過する過程でシステイン残基の脂質修飾とシグナルペプチドの切断を受けて成熟体になる。その後、外膜輸送シグナルを持つリポ蛋白質だけが選別され外膜に局在する。しかし、リポ蛋白質の選別と外膜への局在化がどのような機構で行われているのか長い間不明だった。最近、この最終段階を担う因子として、細胞質膜のABCトランスポーターLolCDE複合体、ペリプラズム空間のシャペロン蛋白質LolA、および外膜の受容体蛋白質LolBが見いだされた。これにより、リポ蛋白質の複雑な生合成機構における局在化の全容が解き明かされようとしている。