膜蛋白質高次機能構造生物学寄付研究部門を開設

定量生命科学研究所は2022年10月1日、明治ホールディングス株式会社(代表取締役社長CEO:川村和夫)からのご寄付により、寄付研究部門「膜蛋白質高次機能構造生物学」を開設しました。

超高齢化社会の現代において老化は誰しもが必ず迎えるライフプロセスです。病的な老化現象として免疫機能の低下や神経変性、筋機能の低下が挙げられます。これらにはさまざまな膜蛋白質 ※1 が関与していることが明らかにされており、その具体的なメカニズムとその制御物質の理解が必要です。

本講座ではそのような老化現象に注目し、免疫応答を調整する分子であるPD-1 ※2 をはじめ、神経活動に重要なナトリウムポンプ ※3 、筋活動に重要なカルシウムポンプ ※4 を中心に研究を進めます。構造生物学的アプローチから原子レベルでのメカニズムの理解と薬剤・食品開発を推進し、健康寿命の延伸に寄与することを目的としています。

※1 細胞などの生体膜に局在する蛋白質分子
※2 Programmed death receptor-1は活性化した免疫細胞に発現する膜蛋白質で免疫細胞の活性を調整する
※3 ATPの加水分解とともに細胞内からナトリウムイオンを排出し、カリウムイオンを取り込む膜蛋白質
※4 ATPの加水分解とともに細胞質からカルシウムイオンを汲みだす膜蛋白質

本研究部門は、イオンポンプタンパク質に関して世界で初めて原子構造の決定に成功、さらにイオン輸送サイクルのほぼ全部の中間体の原子構造を決定し、イオンポンプの作動機構を解明する等の優れた業績を上げ、朝日章、紫綬褒章、学士院賞・恩賜賞等を受賞された豊島近特任教授(東京大学特別教授)が担当します。

本寄付研究部門の設置により、老化に伴う様々な現象を分子構造学的に解明し、得られた構造学的知見を基に薬剤・食品素材がデザインされ、健康寿命延伸という新しい健康価値が提供されることが期待されます。