「老化と若返りの鍵を握る遺伝子」は、自ら病院を訪れ、治療を受ける
~リボソームRNA遺伝子の核膜孔への移動を発見~

地球上のすべての生物が持つリボソームRNA遺伝子(rDNA 注1)は巨大な反復配列(注2)を形成しており、DNA二本鎖切断(注3)を受けると容易にコピー数が増減してしまう不安定な性質を持っています。このrDNA不安定化は細胞老化の原因の一つであることが知られており、rDNAの安定維持機構の理解はとても重要です。

今回、東京大学定量生命科学研究所の堀籠智洋助教、小林武彦教授らの研究チームはDNA二本鎖切断を受けたrDNAが核辺縁まで移動して、核膜孔複合体(注4)に結合することを発見しました。この移動と結合が失われるとrDNAが不安定になったことから、核膜孔結合がrDNA不安定化の抑制に重要な役割を果たしていると考えられます。

このような核膜への移動は、負傷した人が病院を訪れる様子とよく似ています(図1)。現場で処置できないような傷を負ったrDNAは、自ら動いて病院を訪れます。『核膜孔病院』ではrDNAを修復して安定化させる治療が行われていますが、これはすなわち老化を抑制するアンチエイジング治療でもあります。本研究で明らかとなった核膜孔への移動によるrDNA安定化の理解が、細胞の老化と若返りの機構の解明に寄与することが期待されます。

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