杉浦 大祐 (東京大学定量生命科学研究所 分子免疫学研究分野・助教)岡崎 一美 (東京大学定量生命科学研究所 分子免疫学研究分野・准教授)丸橋 拓海 (東京大学定量生命科学研究所 分子免疫学研究分野・助教)清水 謙次 (東京大学定量生命科学研究所 分子免疫学研究分野・特任助教)岡崎 拓 (東京大学定量生命科学研究所 分子免疫学研究分野・教授)雑誌名:Nature Immunology論文タイトル:PD-1 agonism by anti-CD80 inhibits T cell activation and alleviates autoimmunity著者:Daisuke Sugiura, Il-mi Okazaki, Takeo K Maeda, Takumi Maruhashi, Kenji Shimizu, Rieko Arakaki, Tatsuya Takemoto, Naozumi Ishimaru, and Taku OkazakiDOI 番号:10.1038/s41590-021-01125-7発表のポイント:◆ 抑制性免疫補助受容体 PD-1の機能制限を解除することにより PD-1 の抑制機能を誘導することに成功しました。◆ PD-1 の抑制機能を誘導することにより、自己免疫疾患である関節リウマチ、多発性硬化症およびシェーグレン症候群の疾患モデルマウスを治療することに成功しました。◆ ヒトの自己免疫疾患や他の免疫関連疾患への応用が期待されます。発表の概要: 抑制性免疫補助受容体である PD-1 の機能を阻害することにより、がん細胞に反応する T 細胞を活性化してがん細胞を破壊する治療法が 2014 年より使用されています。一方、PD-1 の機能を人為的に誘導することにより、有害な T 細胞を抑制して自己免疫疾患を治療できると期待されますが、PD-1 の機能を誘導する方法の開発は進んでいませんでした。 今回、東京大学定量生命科学研究所の杉浦大祐助教、岡崎拓教授らの研究グループは、徳島大学先端酵素学研究所の竹本龍也教授、同大学院医歯薬学研究部の石丸直澄教授らとの共同研究で、PD-1 の機能を人為的に誘導することに成功しました。この方法を用いて、関節リウマチ、多発性硬化症およびシェーグレン症候群の疾患モデルマウスにおいて PD-1 の機能を誘導すると、各症状が大幅に軽減されました。28分子免疫学研究分野自己免疫疾患に対する新規治療法を発見PD-1 agonism by anti-CD80 inhibits T cell activation and alleviates autoimmunity 近年、自己免疫疾患の治療法は大きく改善していますが、依然として効果的な根治療法は無く、十分な治療効果が得られない場合も多く存在します。今回発見された方法は、従来の治療薬とは作用機序が全く異なることから、自己免疫疾患および他の免疫関連疾患に対する新たな治療法の開発につながることが期待されます。
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