平井 誠也(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻・博士後期課程)胡桃坂 仁志(東京大学定量生命科学研究所 クロマチン構造機能研究分野・教授)25雑誌名:Nucleic Acids Research論文タイトル:Unusual nucleosome formation and transcriptome influence by the histone H3mm18 variant著者:Seiya Hirai, Kosuke Tomimatsu, Atsuko Miyawaki-Kuwakado, Yoshimasa Takizawa, Tetsuro Komatsu, Taro Tachibana, Yutaro Fukushima, Yasuko Takeda, Lumi Negishi, Tomoya Kujirai, Masako Koyama, Yasuyuki Ohkawa, and Hitoshi KurumizakaDOI 番号:10.1093/nar/gkab1137発表のポイント:◆ マウス(Mus musculus)の新規ヒストンH3mm18 を含むヌクレオソーム構造をクライオ電子顕微鏡解析により世界で初めて解明しました。◆ H3mm18 が不安定で弛緩したヌクレオソームを形成すること、そして H3mm18 の発現が筋分化に重要な遺伝子の発現を制御することを明らかにしました。◆ 筋肉の発達と再生のメカニズムを理解するための重要な情報を提供し、創薬や再生医療への応用が期待されます。発表の概要: 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻の平井誠也 大学院生、東京大学定量生命科学研究所クロマチン構造機能研究分野の胡桃坂仁志 教授らのグループは、大阪市立大学大学院工学研究科化学生物系専攻の立花太郎 教授、九州大学生体防御医学研究所の富松航佑 助教、大川恭行 教授らのグループとの共同研究で、マウスのヒストン H3mm18 による新規の DNA折りたたみの基盤構造を解明し、H3mm18 が筋分化を制御することを世界で初めて明らかにしました。 真核生物のゲノム DNA は、タンパク質と結合し、折りたたまれて細胞核内に収納されています。この DNA の折りたたみ構造は、細胞の分化にともなって様々な形に変化し、遺伝子の発現を制御しています。DNA 折りたたみの基本単位は、ヌクレオソームと呼ばれる構造体で、ヒストンと呼ばれるタンパク質に、DNA が巻きついた円盤状の構造を形成しています。本研究では、はじめに、これまで機能が不明であった新規ヒストン亜種H3mm18 を含むヌクレオソームを試験管内で再構成し、クライオ電子顕微鏡解析と生化学的解析を組み合わせることにより、ヌクレオソームの詳細な立体構造と性状を解明しました。その結果、H3mm18 が通常のヌクレオソームに比べ、DNA 末端の運動性が高く、不安定なヌクレオソームを形成するという性質を見出しました。さらに、骨格筋細胞内の遺伝子発現を解析することで、H3mm18 が筋分化に重要な遺伝子制御を担っていることを突き止めました。 本研究で明らかになった構造情報は、筋肉の発達異常に対する化合物を探索する上での基盤となり、創薬や再生医療への発展が期待されます。骨格筋の分化に働く新たな染色体基盤構造体を解明Unusual nucleosome formation and transcriptome influence by the histone H3mm18 variant
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