14RNA機能研究分野Dicer-2 タンパク質は長い二本鎖 RNA を連続的に切断する1分子イメージングでとらえた異常 RNA 切断のしくみProcessive cleavage of long double-stranded RNAs by Dicer-2 enzyme: How are aberrant RNAs eliminated at the single-molecule level?永沼 政広(東京大学定量生命科学研究所 RNA 機能研究分野・助教 (研究当時))多田隈 尚史(上海科技大学 生命科学技術学部・助理教授)泊 幸秀(東京大学定量生命科学研究所 RNA 機能研究分野・教授)雑誌名:Nature Communications論文タイトル:Single-molecule analysis of processive double-stranded RNA cleavage by Drosophila Dicer-2著者:Masahiro Naganuma, *Hisashi Tadakuma, and *Yukihide Tomari(*責任著者)DOI 番号:10.1038/s41467-021-24555-1発表のポイント:◆ Dicer タンパク質は、ウイルスなどに由来する異常な長い二本鎖 RNAを切断することによって、小さな RNA を作り出し、標的となるタンパク質の合成を抑えます。この現象はRNA 干渉と呼ばれます。◆ 今回、1 分子イメージング技術を駆使することによって、代表的なモデル動物であるショウジョウバエの Dicer-2 が長い二本鎖 RNA を切断する様子を直接とらえることに成功しました。◆ その結果、Dicer-2 は、RNA の末端構造やパートナータンパク質の有無にかかわらず、二本鎖RNA を連続的に切断することによって、効率の良い切断が達成されていることが明らかになりました。◆ 本成果は RNA 干渉の分子メカニズムの理解を深め、生命科学研究や RNA 創薬を促進することが期待されます。発表の概要: ウイルスの一部は、自己の増殖のために二本鎖 RNA を作り出します。これに対抗して、感染した細胞側も RNA 干渉という機構を用いて、ウイルス由来の二本鎖 RNA を異常なものと認識し、それを壊そうとします。この RNA 干渉は、原始的な免疫機構としてはたらいているだけでなく、人工的に応用することによって、ねらった特定の RNA を壊して遺伝子の発現を抑える手法として、生命科学研究や RNA 創薬に広く利用されています。今回、東京大学定量生命科学研究所の永沼政広助教(研究当時)、泊幸秀教授、上海科技大学の多田隈尚史助理教授の研究チームは、1分子イメージング技術を用いて、昆虫において二本鎖 RNA を切断する Dicer-2 がはたらく様子を直接観察することに世界で初めて成功しました。その結果、Dicer-2 は、RNA の末端構造の違いやパートナータンパク質である Loqs-PD の有無に関わらず、連続的に長い二本鎖 RNA を切断することで、効率的な切断が達成されていることが明らかになりました。本成果は、細胞が RNA 干渉を介してウイルスなどに対抗するしくみの理解だけでなく、生命科学研究や RNA 創薬の発展を促進することが期待されます。
元のページ ../index.html#16