IQB Annual Report 2021
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岩川 弘宙(東京大学定量生命科学研究所 RNA 機能研究分野・講師/JST さきがけ研究者)Andy Y.W. Lam(東京大学大学院新領域創成科学研究科・博士課程)清川 香織(東京大学定量生命科学研究所 RNA 機能研究分野・学術専門職員)泊 幸秀(東京大学定量生命科学研究所 RNA 機能研究分野・教授)13RNA機能研究分野植物の小さな RNA が巨大なタンパク質合成装置の動きを止めるそのしくみと意外な役割を解明Ribosome stalling mediated by small RNAs in plants: its mechanisms and unexpected function雑誌名:Cell Reports論文タイトル:Ribosome stalling caused by the Argonaute-microRNA-SGS3 complex regulates the production of secondary siRNAs in plants著者:Hiro-oki Iwakawa*, Andy Y.W. Lam, Akira Mine, Tomoya Fujita, Kaori Kiyokawa, Manabu Yoshikawa, Atsushi Takeda, Shintaro Iwasaki, Yukihide Tomari. (*責任著者)DOI 番号:10.1016/j.celrep.2021.109300発表のポイント:◆ microRNA が、タンパク質合成装置であるリボソームの進行を止める「しくみ」とその意外な「役割」を解明しました。◆ microRNA によって引き起こされたリボソーム停止が、植物の発生やストレス応答に必要な小分子 RNA の生産を促進することを明らかにしました。◆ 将来、有用な作物を創出する際の基盤となることが期待されます。発表の概要: microRNA は標的メッセンジャーRNA(mRNA)と結合し、標的の遺伝子発現を抑制することで、植物の発生やストレス応答を制御します。これまでの研究で、植物の microRNAは、タンパク質合成装置であるリボソームの進行を止めることが示されていましたが、microRNA を介したリボソーム停滞の「しくみ」や、タンパク質合成抑制以外の「役割」は不明なままでした。 東京大学定量生命科学研究所の岩川 弘宙 講師、泊 幸秀 教授らの研究グループは、立命館大学の竹田 篤史 教授、理化学研究所の岩崎 信太郎 主任研究員らとの共同研究で、SGS3 と呼ばれる二本鎖 RNA 結合タンパク質が microRNA に依存するリボソーム停滞の決定因子であることを見出しました。さらに、リボソーム停滞が植物の発生やストレス応答に重要な二次的小分子 RNA の生成を促進することも明らかにしました。本研究は、小分子 RNA を介した遺伝子発現制御機構に新しい知見をもたらすだけでなく、タンパク合成を越えたリボソームの新機能を明らかにした大きな発見と言えます。また、これらの知見は、将来、有用な作物を創出する際の基盤となることが期待されます。

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