IQB Annual Report 2020
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| IQB Institute for Quantitative Biosciences4ゲノムから脳まで、幅広く生命に関わる研究分野を包含する研究所のこれまでと今、そしてこれからについて、初代所長である白髭克彦教授に、ジャーナリストで当研究所では科学技術と倫理を担当する池上彰客員教授が聞いた。池上 : 東京大学定量生命科学研究所(以下、定量研)が発足して、現時点ではどのような研究所になっていると感じていますか。白髭 : 業績面でも評価される存在になりつつあると思います。また、定量という名を冠した研究所はほかにないので、その点でも注目されています。科学では、定量するのは当たり前のことです。その当たり前を研究所の名前にするまでには紆余曲折がありました。研究所としての方向性を定めるべきだという話もありました。この議論は、定量研の前身である分子細胞生物学研究所のときにもあったものです。なぜなら、どんな生物にも分子も細胞もあるわけで、これという分野を想起させない名称だからです。池上 : 確かにその通りですね。白髭 : ですから、何か特定の分野に絞るべきではという話もあったのですが、分子細胞生物学研究所の最後の年に、アドバイザリーカウンシルのメンバーに、いい人材が集まったことでもあるし、この研究所はダイバーシティを大切にするのがいいのではないかと言われ、なるほどと思いました。池上 : いろいろな分野の専門家がいれば、コラボレーションの可能性もありますね。白髭 : 特に生命については、集団科学とでも言うのでしょうか、ひとつのテーマについて、それぞれの専門的な知識を持った人たちがコミットして最終的に一枚の大きな絵を描くような研究が主流になってきています。今、定量研では高次機能である脳から、生命の設計図であるゲノムまでをカバーしていて、それらの共通のプラットフォームとして情報科学があるという構図になっています。この分野の研究者も、数学やプログラミングの知識も求められるようになってきました。計測技術が進歩しているので、20~30年前に比べると、得られるデータの量が何億倍にもなっています。しかも、感度も上がっていて、かつては一個一個While it is important to conduct research that competes in highly competitive fields, it is also important to evaluate research that cultivates wastelands that no one would ever consider.Diversity is at the heart of the Institute.

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