IQB Annual Report 2020
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| IQB Institute for Quantitative Biosciences22──────── なぜ年をとると病気になりやすくなったり、いわゆる衰えを感じるのだろうか?その原因を探るため生物の設計図であるゲノム、中でも特に遺伝子数が多く変化が激しいリボソームRNA遺伝子に注目して調べた。 東京大学定量生命科学研究所ゲノム再生研究分野の小林武彦教授とゲノム情報解析分野の白髭克彦教授らは、東北大学大学院薬学研究科の稲田利文教授らとの共同研究により、若いマウスと高齢マウスのリボソームRNA遺伝子を比べたところ、DNAメチル化の上昇、遺伝子の発現量の低下、DNA配列の変化(変異)を発見した。興味深いことに高齢マウスで見つかった変異を酵母菌に導入したところ、酵母菌の寿命が短縮した。リボソームRNA遺伝子に起こる変異がマウスでも老化の一要因になっていると考えられる。またヒトとマウスのリボソームRNA遺伝子は非常によく似ていることから、ヒトでも同様に老化の原因となっていると予想され、人の老化に伴う疾患の治療薬の開発などに繋がる可能性がある。Molecular and Cellular Biology論文タイトル:Age-dependent ribosomal DNA variations in mice著者:Eriko Watada, Sihan Li, Yutaro Hori, Katsunori Fujiki, Katsuhiko Shirahige, Toshifumi Inada, and Takehiko KobayashiDOI番号:��.����/MCB.�����-��掲載 : https://www.iqb.u-tokyo.ac.jp/press_release/������/発表のポイント:□若いマウスと高齢のマウスのゲノム(リボソームRNA遺伝子)を比較して変化を調べた結果、DNAのメチル化の上昇、遺伝子の発現量の低下、DNA配列の変化(変異)を発見した。□高齢マウスで発見したリボソームRNA遺伝子の変異を酵母菌に導入したところ、酵母菌の寿命が短縮した。このような変異の蓄積が老化の原因になっている可能性がある。□なぜ老化すると細胞の働きが低下するのか、その1つの原因が解明できた。ヒトの細胞でも同様のメカニズムが働いていると予想され、老化に伴う疾患の治療薬の開発などに繋がる可能性がある。白髭 克彦(ゲノム情報解析研究分野 教授)小林 武彦(ゲノム再生研究分野 教授)ゲノム再生研究分野/ゲノム情報解析研究分野加齢に伴いゲノムはどのように変化するのか和多田 江理子(ゲノム再生研究分野 大学院生:研究当時)堀   優太郎(ゲノム再生研究分野 特任研究員)藤木   克則(ゲノム情報解析研究分野 助教)

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